トラック運送業を営む会社にとって、事業の土台は国から受けた「一般貨物自動車運送事業」の許可です。事業承継やM&Aを考えるとき、この許可をどう引き継ぐかは、避けて通れない論点になります。

本コラムでは、承継の形ごとの許可の扱いと、認可の手続きで押さえておきたいポイントを、経営者の方向けに整理します。

1. 承継の形によって手続きが変わる

一般貨物自動車運送事業の許可は、事業を営む会社や個人に与えられています。そのため、誰が事業を引き継ぐのか、どんな形で引き継ぐのかによって、必要な手続きが変わります。

承継の形と、許可の扱い(一般的な整理)
承継の形許可の扱い主な注意点
株式の譲渡許可を持つ会社そのものは変わらない役員の変更などに伴う届出や、体制の確認が必要になる場合がある
事業の譲渡・譲受運輸局の認可を受けて引き継ぐ事業の全部を譲る場合に限られる。個人事業から法人にする場合も認可が必要
合併・会社分割運輸局の認可を受けて引き継ぐ許可を持つ会社が消える形の合併などが対象
相続(個人事業主)運輸局の認可を受けて引き継ぐ亡くなった日から60日以内に認可を申請する必要がある

一般的な整理です。実際の手続きは、管轄の地方運輸局の案内でご確認ください。

中小企業のM&Aで多い株式の譲渡では、許可は会社に残ります。ただし、経営陣が入れ替わると、運行管理や整備管理の体制が変わることがあります。承継の形にかかわらず、承継後も事業を適正に続けられる体制が整っているかを確認しておくことが大切です。運行管理者や整備管理者の資格を持つ人が、承継後も社内に残ってくれるかどうかは、早い段階で確かめておきたいポイントです。引き継ぐ側から見ても、ここが最初に確認される点の一つになります。

2. 認可の手続きで押さえたいこと

事業譲渡・合併・分割・相続の認可では、新しく許可を受ける場合と同じような確認が行われる点に注意が必要です。中国運輸局の案内によると、2019年11月からは、これらの認可申請でも資金計画表と残高証明書の提出が求められるようになりました。東北運輸局の公示では、事業譲渡などの認可申請について法令試験を行うことも示されています(許可を持つ既存の事業者が存続する合併・分割などは対象外)。

認可を受けて引き継ぐまでの流れ(一般的な例)
  1. 確認STEP 1承継の形と要件の確認株式譲渡か事業譲渡かなどを決め、引き継ぐ側が要件を満たせるかを確かめる
  2. 相談STEP 2運輸局への事前相談必要書類、資金の確認、法令試験の有無と日程を確かめる
  3. 申請STEP 3認可の申請資金計画や残高証明などの書類をそろえて申請する
  4. 承継STEP 4認可を受けて引き継ぐ認可を受けたうえで、事業の引き継ぎを実行する

審査には、一定の期間がかかります。申請の前の準備にも時間を見込んでおきましょう。M&Aの最終契約や引き継ぎの日を決める際は、法令試験の日程や審査の期間を逆算して、スケジュールを組むことが欠かせません。

事業譲渡で引き継ぐ場合は、営業所や車庫、車両を使う権利も、あわせて引き継げるかを確認しておく必要があります。土地や建物を借りている場合は、貸主の承諾が必要になることもあります。個人事業主として運送業を営んでいる場合は、相続の申請期限が短いことを踏まえ、後継者となる家族と必要な書類や手続きの流れを、元気なうちに共有しておくことをおすすめします。

3. 運送業の承継で、もう一つ大切なこと

運送業の価値は、許可や車両だけではありません。ドライバーや運行管理者、整備の担当者といった人材、そして荷主との長年の信頼関係が、会社の力そのものです。承継の話を進めるときは、ドライバーや管理者が引き続き働いてくれるか、主要な荷主との取引が続くかを、許可の手続きと同じくらい丁寧に考える必要があります。

特にドライバーの確保が難しい時代には、人材と荷主の基盤を持つ会社は、引き継ぐ側にとっても大きな魅力になり得ます。車両の状態や整備の記録、労働時間の管理の状況などを日頃から整えておくことが、承継の場面での評価にもつながります。

許可の手続きは行政書士などの専門家、承継の形や条件づくりは支援機関と、役割を分けて早めに相談しておくと安心です。まずは、自社の承継の準備がどこまで進んでいるかを、一度確かめるところから始めてみてください。

参考:国土交通省 近畿運輸局「一般貨物自動車運送事業の譲渡譲受・合併・分割・相続」、国土交通省 中国運輸局 案内資料、国土交通省 東北運輸局 公示