親族や社員に会社を引き継ぐとき、大きな負担になりやすいのが、自社株を渡すときにかかる贈与税や相続税です。この負担を軽くするための国の制度が「事業承継税制」です。なかでも、より使いやすい「特例措置」には期限があり、2026年度の税制改正で計画の提出期限が延長されました。

本コラムでは、制度のあらましと、押さえておきたい期限、検討の進め方を、経営者の方向けにやさしく整理します。

1. 事業承継税制とは

事業承継税制は、後継者が先代から自社株を贈与や相続で受け取ったとき、一定の要件を満たせば、その株にかかる贈与税・相続税の納税が猶予され、さらに一定の場合には免除される制度です。会社の株価が高く、納税資金が承継の壁になっている会社にとって、有力な選択肢になります。

制度には「一般措置」と「特例措置」があり、特例措置は対象となる株の範囲などが広く、より使いやすい仕組みとされています。その代わり、使える期間が限られています。

対象になるのは、非上場の中小企業の株式です。先代経営者から後継者への承継だけでなく、条件を満たせば先代以外の株主からの贈与なども対象になる場合があります。詳しい要件は、制度の案内や専門家への相談で確認してください。

2. 特例措置の期限

中小企業庁の案内によると、2026年度の税制改正で、特例措置を使うために必要な「特例承継計画」の提出期限が、2027年9月30日まで延長されました。一方で、実際に株を贈与・相続する期限は2027年12月31日のまま変わっていません。

特例措置を使うまでの流れと期限(法人版)
  1. 検討STEP 1使うかどうかを検討株価の試算、後継者、承継の時期を、税理士などと整理する
  2. 計画STEP 2特例承継計画を作る認定経営革新等支援機関の助言を受けて計画をまとめる
  3. 提出期限都道府県に提出(2027年9月30日まで)提出先は、本店のある都道府県
  4. 承継期限株の贈与・相続(2027年12月31日まで)この期限までの贈与・相続が特例措置の対象

計画の提出期限と、株を渡す期限の差は、わずか3か月です。計画を出しておくだけでは足りず、期限までに実際に株を渡す準備が整っている必要があります。個人事業主向けの「個人版事業承継税制」には、別の期限が設けられていますので、あわせてご確認ください。

3. 使うかどうかを考えるときのポイント

検討の視点
視点確認したいこと
税負担の大きさ自社株の評価額はどのくらいか。制度を使わない場合の税額はどの程度か
後継者後継者が決まっているか。期限までに株を渡せるか
承継後の負担猶予を続けるための報告などの手続きを、承継後も続けられるか
将来の計画将来、会社を売却したり事業を大きく変えたりする予定はないか

一般的な視点の整理です。実際に使えるかどうかは、税理士などの専門家にご確認ください。

納税猶予は、承継後も一定の要件を守り続けることが前提です。要件を満たさなくなった場合や、猶予の対象になった株を売った場合などには、猶予されていた税金と利子税の納付が必要になることがあります。将来、第三者への売却を考えている会社は、特に慎重な検討が必要です。制度を使うかどうかは、目先の税額だけでなく、10年、20年先の会社の姿まで見すえて判断しましょう。

4. 期限から逆算して、早めの準備を

計画の作成には、認定経営革新等支援機関(税理士や金融機関など)の関与が必要です。株価の試算や後継者との話し合い、株主構成の整理には時間がかかるため、期限の直前に慌てないよう、早めに相談を始めることをおすすめします。

相談の際は、直近の決算書、株主名簿、後継者の候補、先代経営者がいつ頃まで経営に関わりたいかといった情報を用意しておくと、話が具体的に進みます。また、親族に株を集中させる場合は、ほかの家族との公平さにも目を向ける必要があります。経営承継円滑化法には、遺留分(家族が最低限受け取れる相続分)に関する民法の特例も設けられており、あわせて検討する価値があります。

一方で、事業承継税制はどの会社にとっても得になる制度ではありません。親族内承継、社員への承継、第三者への承継のどれが自社に合うのかを考えたうえで、手段の一つとして検討することが大切です。まずは、自社の承継の準備がどこまで進んでいるかを確かめるところから始めてみてください。

参考:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」、山田&パートナーズ「事業承継税制 特例承継計画等の提出期限の延長」